本格始動した17年、建築のデジタル化=「建築とコンピュータ」がどのような契機を迎えようとしているのかを、メルクマールとしての「鹿島の現在と近未来」を通して検証する。
□BIM普及を加速化するため組織の枠組みを超えて積極的にbSJ(施工小委員会)の活動推進□
BIMはすでに離陸し、巡航速度に達しつつある一方で、「まだシートベルトは外せない」との意見もある。さらなる安定飛行のためには、業界全体でエンジンをふかし、協働すべきだと考えていた矢先の16年12月1日、「第1回 buildingSMART Japan(bSJ)の施工小委員会を鹿島KIビルにて開催」との情報が飛び込んできた。bSJは、主にさまざまなソフトウェア間でのデータ交換を実現するIndustry
Foundation Classes(IFC)ファイル形式の運用指針策定で知られた旧IAI日本が16年6月14日付で改称したもの。
キーマンである矢島和美氏(建築管理本部本部次長・BIM推進室長)と遠藤賢氏(BIM推進室課長)の動向をトレースする中から、改称に至る背景とパブリック・ドメインとしてのbSJの今後の活動指針についても報告する。
□bSI会長が建設会社として先駆的にBIMを運用する鹿島をメンバーへと招聘したのが発端□
bSJは、改称とともに、本部をロンドンに置く世界的なBIM標準化推進組織であるbuildingSMART International(bSI)の日本支部としても施工BIMの推進活動を本格化させている。
鹿島がbSI上位の会議体で、openBIMの採用と実践を進める戦略諮問理事会(SAC:Strategic Advisory Council)に、会長のパトリック・マクレミー(Patrick MacLeamy)氏からの招聘を受け、アジア初の建設会社として参加したのは16年2月のことだった。SACは企業組織から構成されるが、関連して矢島和美氏は、bSIのボードメンバーとの年2回の会議に鹿島の代表として出席する。
これによってSACは、Arup(エンジニアリング・コンサルティング:米国)、Autodesk(ソフトウエア:米国)、HOK(建築設計事務所:米国)、Nemetschek(ソフトウエア:ドイツ)に鹿島を加えた5社構成となり、bSIを構成する企業・団体と合わせて、全20社構成となった。
マクレミー氏が鹿島を招聘した背景には、先駆的なBIM運用を実践する建設会社=鹿島との協働を通じて、建築設計事務所とソフトウエア・ベンダー中心のbSIの活動を強化し、建設業全体のBIM運用にパラダイム・シフトするとの強い意向が働いている。それを受けてbSJにおいても、施工小委員会が発足し、活動を加速させることになったといえよう。
なお、マクレミー氏は、米国の大手建築設計事務所であるHOKのChairman(会長)であり、BIMによるフロントローディングの優位性を「マクレミー(MacLeamy)曲線」によって明らかにしたことで知られている。
□参加申込書が入手できるホームページを設けて建設業以外からも広くメンバーを募集中□
bSJの第1回施工小委員会に出席したのは、建設会社、構造系設計事務所、ソフト+ハードウエア・ベンダー、BIM関連サービス会社、公的機関など34社57名であった。
bSJの理事・建築委員会委員長も兼務する矢島和美氏からは、「IAI日本からbuildingSMART Japanへの改称報告」「米国BIM Forum に類したBIM会議の開催計画」「4月初旬にバルセロナで開催の標準化会議への参加要請」「日本の施工BIMを世界に広げていく」などの指針が示された。
施工小委員会リーダーの遠藤賢氏からは、「サブリーダーへの吉田日都士氏(安藤ハザマ)・三輪哲也氏(竹中工務店)の就任」「施工現場におけるBIMの活用事例の蓄積と共有」「BIMとIT、IoT、製造技術などの相互利用(Interoperability)の推進」「1~2カ月ごとに分科会を開催し情報共有」「建設業者だけでなく、サブコン、IT、製造業者から多様な参加者を募る」などの報告があった。
第2回目の施工小委員会も1月26日には開催される。bSJへの入会申し込みは、次のURLから可能だ。
http://www.building-smart.jp/members/apply.php
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)