◇高卒者定期採用、内部研修で即戦力に
内装工事の東和(埼玉県川越市、石田信長社長)が高卒者の定期採用を始めてから6年が経過した。毎年4月に入社する新卒者が現場に配属されるのは8~9月。その間、ベテラン職人が軽量鉄骨ボードなどの内装工事の基本を徹底指導する「東和アカデミー」で即戦力の人材に鍛え上げる。来年4月で設立44年。技術を売り物にしてきた同社の「技」を若手につなぎ、さらなる飛躍を目指す。
埼玉県を中心に主に北関東エリアでゼネコンの下請施工を手掛ける同社は、労務の多くを2次下請に外注する。ただ、2次下請には規模の小さい会社が多く、技能者の処遇改善もなかなか進まないため、人手を確保するのに苦労していた。
「このままでは技能を継承していけなくなる」。そんな危機感から、同社が直接採用する形で高卒者の募集に取り組むことを摸索。8年ほど前から高卒者の定期採用を目指し、県内の高校に求人票を出し始めた。石田社長のつてで北海道松前町も毎年訪問。働き手の確保に力を注ぐ。採用人数には波があるが、毎年数人を確保。来春入社の内定者2人を含め、これまでに25人を採用した。中には職人を目指して入職した女子社員もいる。
協力会社は80社ほどで、同社が施工に携わる現場には日々150~200人が従事する。4月に入社した社員はまず、各現場を回って軽鉄ボード、クロス、床などの作業を手伝いながら一通りの仕事を体験。その上で5月中ごろから富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)で3週間にわたる合宿生活を行い、内装の基礎を学ぶ。
同センターでの研修後は、本社倉庫の架台を利用した実践的な内部研修が待っている。「アカデミー」と称する研修の講師は同社のベテラン職長などが務め、▽壁ボード貼り基礎▽LGS(軽量鉄骨)施工基礎▽LGS・ボード初級▽GL(石膏ボード直張)工法基礎▽石綿吸音板仕上げ▽点検口取り付け作業▽復習・まとめ-を合計273時間にわたって実施。即戦力として現場作業ができるよう育て上げる。
「手探りで行ってきた育成の取り組みがようやく形になってきた」。石田社長の実弟で、採用業務を担当する石田信次常務はそう話す。定期採用組のトップはまだ20代前半。技能伝承の効果が見えてくるのはこれからだが、確実に人材が増えつつあることに一定の手応えを感じているという。
新卒者を定着させることを意識し、積極的な声掛けにも心を配る。現場に直接出向くことが多い彼らが月に1度は会社に集まる場を設け、社長も食事に誘うなどしてコミュニケーションを取りやすい雰囲気をつくる。
「技術の東和」を標ぼうする同社。一定の実務経験積んだ人材には技能検定試験の受験も奨励し、過去に合格した先輩がアドバイスする受験対策指導や現地トライアルにも出向かせる。資格を取得すれば、職務手当が支給され、「本人のやる気も見違えるように変わってくる」(石田常務)という。