2024年から始まった中小企業基盤整備機構(宮川正理事長)の「中小企業省力化投資補助金」の活用が全国的に広がっている。売り上げ拡大や生産性向上を後押ししようと、人手不足に悩む中小企業などが行う省力化投資を支援している。付加価値額や生産性向上を図り、各社で働く社員の賃上げに役立ててもらうのが狙いだ。対象製品リストから省力化製品を選んで導入する「カタログ注文型」(随時申請受け付け)と、省力化効果のあるオーダーメード・セミオーダーメイドの設備やシステムなどの導入に対して補助する「一般型」(公募回制)がある。カタログ型は4月末時点で3,641件、一般型は6月に発表した第5回の公募までに計6,508件を採択した。建設業の導入事例も多い。建設DXやICT施工の取り組みを加速する上でも同補助金の積極活用が期待されている。
Interview
高富産業(埼玉県深谷市)専務 青木 大周 氏
建設DX推進の手段として、「中小企業省力化投資補助金」の活用が広がっている。導入事業者の高富産業(埼玉県深谷市、青木貴俊社長)で補助金利用の責任者を務める青木大周専務に、補助金活用の動機をはじめ、意義と効果を聞いた。
ーー高富産業の概要、特徴をお話しください。
「創業は1992年4月、地域のインフラ整備と維持管理を通して社会に貢献する建設業として、道路、河川、橋梁、造成などを手掛けています。強みは機動力だと思っています。発注者や生活者の要望への迅速な対応を心がけています」
ーー省力化投資補助金を知った経緯を教えてください。
「生産性向上は避けて通れない課題と考えていたところ、行政や関係機関の情報から知りました。ICT化を加速するチャンス、きっかけになると思いました」
ーー申請の動機、背景、抱えていた課題を教えてください。
「技術者不足、高齢化、担い手不足という建設業共通の課題を抱えています。その中で、限られた人材で業務を遂行するためにDXは不可欠です。また、若い世代に魅力ある産業として見てもらうためにも大切だと思っています」
ーー省力化の観点から、効果をお聞かせください。
「現場作業は効率化できていると実感しています。特に人的な工数は減っています。そして、職場環境の改善という波及効果も出ていると感じています」
ーー高富産業の今後をお話しください。
「生活を支える重要な産業である建設業の一員として、DX推進によって生産性向上、働きやすい環境づくりを目指します。建設業の未来を見据えた投資、技術力向上に努めていきます。そして、若い人たちが将来性を感じられる企業、地域に必要とされる企業になっていきたいと考えています」
Interview
高富産業 取締役
岡田 拓 氏
今回導入したシステムは、3Dスキャナーによる現場測量、点群処理、3Dデータの作成、施工管理までを一体化したものです。外部の会社に頼ることなく、社内ですべてを行える体制を整えることによって、対応スピードの向上、技術の蓄積と社員のスキルアップにつながっています。
これまでは複数人による現場測量、その後の図面作成、数量計算、出来高確認に多くの時間を要していました。導入した3Dスキャナー測量と点群処理によって、少人数、短時間で現場を把握することができるようになりました。出来高確認などにかかる人員と工数は平均50%の削減されています。
現場をデータ化することで事務所でも確認作業ができるため、人員の移動や拘束時間を減らすことができました。そして、人にしかできない品質管理や安全管理に注力できることも大きな効果として現れています。省力化とともに社員のスキル向上にもつながっていると実感しています。
高富産業株式会社
| 〈住所〉 | 〒366-0811 埼玉県深谷市人見246-10 |
|---|---|
| 〈電話〉 | 048-574-6007 |
| 〈代表者〉 | 代表取締役 青木裕美 |
| 〈創業〉 | 1992年4月17日 |
| 〈資本金〉 | 2,000万円 |
| 〈建設業許可〉 | 埼玉県知事許可 特定建設業(特-6)第63743号 |
| 〈種類〉 | 土木工事業、とび・土工工事業、石工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、塗装工事業、解体工事業 |
| 〈社員数〉 | 15名 |
| 〈主要受注先〉 | 埼玉県、深谷市、埼玉県警察本部 |
全国建設業協会専務理事 山崎 篤男 氏に聞く
建設業の生産性は、他産業に比べて総じて低い水準にある。少子高齢化の中で、就業者数も減少している。そうした中でも建設業が持続可能な産業として活動していくためには、人材の減少を上回る生産性の向上を図っていく必要があるだろう。その際には、DXやICTをいかに活用していくかが問われる。
中小建設業におけるDXやICTの活用は、全体的に見れば、まだ十分に進んでいないといえる。ただ、そうした中でも、思った以上に積極的に取り組んでいる事例も見受けられる。DXやICTを積極的に活用している企業は、社長の意思決定が早いように感じる。それは危機感の表れでもあると思われる。生産性向上を図る各種取り組みを通じて、人材獲得につなげていこうという意志を感じる。こうした好事例も参考にしながら、中小建設業全体で生産性を向上させていくことを期待したい。
全国建設業協会では毎年、技術研究発表会を開催している。会員企業における技術者の「技術力と資質の向上」と「プレゼンテーション能力の向上」を目的としたものであり、技術者それぞれのアイデアを披露してもらい、水平展開につなげる狙いがある。また、2025年度から国土交通省の建設市場整備推進事業費補助金(ICT補助金)の執行団体となり、補助金の交付事務を行っている。補助金額は、25年度が2.5億円、26年度が3億円となっているが、予算額を上回る応募があった。
中小企業庁が総額3000億円の規模で創設した中小企業省力化投資補助金は、生産性向上に効果的な汎用製品をカタログから選択・導入できる。全産業を対象とした支援策ではあるが、カタログを見てみると建設業においても効果的に活用できるメニューもそろっている。ぜひ、補助金の活用に向けて積極的に応募し、生産性向上に役立ててほしい。
同補助金を含め、地域の建設企業が利用できる助成金・補助金をリストアップして、全建のホームページに一覧を掲載している。これを参考にして、必要に応じて行政書士と相談するなどして、各企業の取り組みに応じた支援策を活用してほしいと考えている。